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2020.11.26

ツル

写真は、まど・みちおさんの「ツル」という詩です。
温かく深く優しい詩がまどさんの詩の特徴だとしたら、それとは少し違いますが、
たぶんまどさんの詩の中で私が一番好きな作品です。
だから、葉書ぐらいの大きさの紙に書き写して机の前のホワイトボードに留めています。
そして、いつでも読んでいます。
最後のところ。不自然なくらいに畳みかける何もない空の描写。
細くて細くて見えないほどの希望。いや、たぶん見えない。
この詩を一日に何度も読む人なんか、きっといないだろうな、と思いながら、
毎日読んでいます。


詩とは関係ないのですが、立ち尽くすツルのことを考えているうちに、思ったこと。

万華鏡は情緒的な部分と理論的な部分とでできていて、上手く言えないのですが、
情緒的と仮に言ったのは映像の印象のような、正しい答えのないもの。
理論的と言ったのはミラーのことです。
私はミラーを組む(正確に切って正確に組む)のがとても下手です。
ミラーが下手な私は自分の事を、遠くまで飛べない鳥のように感じています。
綺麗に正確に組まれたミラーはその存在を忘れさせます。
そんなミラーはただのオブジェクトの集合をひとつの景色に変えます。
どんなに良いイメージを作れそうになったとしても、出来の悪いミラーではミラーの存在が前面に出てきて、オブジェクトは単なる物体になります。

万華鏡作家の中にはとても美しいミラーを組む人がいて、
そんな人の万華鏡やその作家はどこまでも飛んで行ける鳥のように感じるのです。
その美しい飛翔を、あっという間に地面に落ちた私が見ている。
そんなふうに思ってしまうんです。

どこまでも飛んで行ける、その強い翼はきっと初めから生えていたわけではなく、
何度も地面に落ちながら強く美しくなったのだと思うのですが。





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