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2019.10.07

万華鏡の修理

私のオブジェクトは液体の中でゆっくり動くように薄く軽く作っていますので、
時々オブジェクトケースのガラスの壁に張り付いてしまうことがあります。
ふとした拍子に壁を離れてまた動き出すこともあれば、そのまま動かないこともあります。
写真の万華鏡(鴨の羽色のquiet)は運悪く映像の中に動かない形で張り付いてしまい、修理を依頼されたものです。3月の個展の時にお買い上げいただき、半年以上の間よく我慢してくださったと、
申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

作業はボディとオブジェクトケースを切り離し、オブジェクトケースからオブジェクトを一つ残らず救い出して、新しいケースに入れて作り直すをいうことをします。
お買い上げいただいた以上すべてお客様の物ですから、オブジェクトの一つとして壊すことのないように、細心の注意を払って、まずケースの蓋にあたる厚さ1ミリのガラスを少しずつ割って、中のオブジェクトを救い出します。
その時点で張り付いていたオブジェクトはするりと離れていきました。
慎重に慎重にピンセットで残りのオブジェクトをすべて古いケースから出します。
幸い、一つも壊れることなくオブジェクトを新しいケースに移すことができました。

緊張して作業していた時、体がとても温かくなり、凄く幸せだと思ったのです。
大切に扱うという作業をできることはとても幸せなことだなと思ったのです。

誰かに大切にしてもらえることは幸せなことです。
でも、誰かを、あるいは何かを大切にするということは、もっと幸せなことなのだと思いました。
だから、この世には「宝物」というものがあるのだと。
宝物というのは、その物というよりも、それを大切にする気持ちのことなのではないか。
そんなふうに思いました。
とても幸せな今日でした。


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