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2017.04.19

沙羯羅を想う

奈良興福寺国宝館に、私は何度行ったか憶えていない。
学生の時はアルバイトをして、働き始めてからは僅かな給料を貯めて、
結婚してからは「旅行にいく?」と訊く夫に、「じゃあ、奈良がいい」と答えた。

大人気の阿修羅を含む八部衆が好きで、
特に少年の姿をした阿修羅、五部浄(ごぶじょう)、沙羯羅(さから)、乾闥婆(けんだつば)が大好きで、
中でも五部浄と沙羯羅を私は熱愛していた。
八部衆がどんなに人の心を掴むかを、私なんかが書くのもおこがましい。
ただ鼻の奥がつんとして、喉がぎゅっと締めつけられ、目の前にいるのに会いたい。
そういう者たちにただ会いに行った。

いつだったか、誰だったかに、
「仏像はどういうのが好き?」と尋ねられて、迂闊にも
「可愛いのが好き」と言ってしまった。そうしたら、
「円空とか?」と訊かれ、自分が取り返しがつかないくらい言葉の使い方を間違えたと感じ、
曖昧に否定して話が終わった。

八部衆が元々安置されていた西金堂造立の発願者である光明皇后の、
一歳にならずに亡くなった皇子に対する想い。
「もし生きていたら…」という母の想いを少年の姿に映しているのだという説を知り、
その本を読み始めた。
それが本当かどうかわからないけれど、
理屈ではなく胸の底に深く落ちるものがある。
「皇子が生きていたら、6歳」の年、八部衆は作られた。
沙羯羅はちょうどそのくらいの少年の顔をしている。

国宝館は今耐震工事のため閉館中。
そのかわり仮講堂で春と秋に公開してくれる。
今まで国宝館の味気ない空間に並んでいたけれど、西金堂にいた時の雰囲気を感じることができるのかな。
慣れなくて、戸惑うかも。
5月末京都でのBKS万華鏡国際大会(この名前、すごく恥ずかしい…)が終わったら、
そのまま会いに行く。