2016.12.25
苦しい息の中で、水を飲みたいと願う義父の口に、何度も砕いた氷を運ぶ。
最後のひとかけが口の中で溶けると、
「ごちそうさん」と言うのだ。
その言葉を聞いて、私は頭から暗い空間に落ちていく。
クリスマスイブの午後、義母を老人ホームに連れて行った。
帰りのタクシーの窓から、夢のようなイルミネーションが見えて、
それがカトリック教会だとわかって、そうか、と思った。
ここは、私だけの小さなあたたかい夜。
ここではひとりであり、でもそれを見ていてくれる人がいるから、
安らいで、あたたかい小さな夜。
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