2016.09.27
夫は戦闘機が好きで、ずいぶん綺麗で可愛らしい模型を集めて、
ほとんど誰も入らない自室に展示していたが、
息子の子供にはソフトグライダーという、薄い発泡スチロール製の飛行機を買い与えていた。
遊び相手をするのは専ら私で、隣の公園で遊ぶ私たちを夫は3階 から眺めて、
時折手を振っていた。
今日は久しぶりに、6歳になったその男子と飛行機を飛ばした。
平日の人気のない公園は、金木犀の香りが満ち満ちて、
香りの分だけ心地良く重い空気の中で飛行機を飛ばすのはとても楽しく、
その飛行について喜んだり落胆したりを繰り返し、午前午後、3時間近くを公園で過ごした。
風が止んでふっと静かになった瞬間を待って、ふわっと飛ばすと真っ直ぐに遠くまで飛ぶ。
「ふわっと」は形と気持ち。逆らわずに空気にのせる感じ。
そんな感じを、6歳男子が私の言葉を超えて体得していくのが、とても嬉しかった。
一昨日、渋谷のBunkamuraに万華鏡展を見に行った時、
すぐ隣の小さなショップの前で、若い男の子が、小さな飛行機を飛ばしていた。
それは、絶対に戻ってくる飛行機で、繰り返し繰り返しその様子を見せているのを、
私はしばらく眺めていたが、観客がいないからか、すぅっといなくなってしまった。
ざざざざっと砂に頭から突っ込む、
草の繁みに見えなくなる、
藤棚の柱に激突してひっくり返る、
その堕ちた飛行機を拾いに行くとき、6歳男子は走る。急ぐ必要はないのに走る。
絶対戻ってくる飛行機って凄い。
でも、私はあまり好きじゃない。
その飛行を追って、思いがけない場所と景色へ、
導いてくれる飛行機が好き。
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