2016.03.06
切って水に挿そうか、棒を立てて支えようか、迷いながら、
香りの強さに 、あちらへこちらへ、というより、
あちらへ、さらにあちらへ、と移動させ、真夜中の玄関で落ち着いた。
魚売り場で、手のひら大の瓶に入ったクリオネが売られていた。
「観賞用 980円」
目を凝らすと小さな赤いものが数個ゆらゆら揺れている。
本来の私なら絶対買っていたはずだけれど、、
瓶の中で死んだクリオネのことが目に浮かび、手が出せなかった。
眠ってしまうと、頭の中で生きている人も死んでしまいそうで、
なかなか眠る気になれない。
目覚めると、眠りの中で生きていた人が消えてしまうのだと思い、
罪悪感にとらわれる。
こんなのはおかしい。間違っている。
もうすぐ午前3時。
夜なのか朝なのか。
コブシの花が咲き始めた。
昼も夜も、春。
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