2015.05.05
得体の知れない男が、時々草取りをしている。
這いつくばって土に顔をつけるようにして、
狭い地面の草を一日中抜いている。
3階の窓からその姿が見えた。
そんなふうに、人の中に人は入ってくる。
今年、マツバウンランがそこに咲き始めて、
それを見るのが毎日の喜びだった。
細い茎がひょろっと伸びて薄紫の小さな可愛い花。
守ってやらなくても、いずれ生き延びて群れて揺れる帰化植物だ。
けれど、その姿を見るのが嬉しくて、
行ったり来たりしながら顔を近づけていた。
昨日の夕方通りがかったら、すっかり抜かれていた。
同じ地面に咲いているニワゼキショウは手つかずで。
花の咲いていない草は生えている。
その草取りの基準がわからない。
わからないまま、そんなふうに人は人の中に入ってくる。
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